
ウエスト症候群(West症候群・点頭てんかん)
小児神経専門医が、診断から治療・ご家族の支援までご説明します
最終更新:2026年9月27日
こんな動きを繰り返していませんか?
気になる動き
- 頭を「コクン、コクン」と前に倒す動きを繰り返す
- 両腕を「バンザイ」するような動きを何度も繰り返す
- 肩をすくめる動きを、10〜30秒おきに繰り返す
- 体を「ギュッ」と硬くする動きが、続けて起こる
発達の変化
- 以前より笑わなくなった
- 目が合いにくくなった
- できていたこと(首のすわり、寝返りなど)ができなくなった
- 反応が鈍くなった
🚨 まず動画を撮って、早めにご相談ください
ウエスト症候群は、治療を始めるのが早いほど見通しが良くなります。
気になる動きがあれば、スマートフォンで2〜3分ほど撮影して、小児科を受診してください。
ウエスト症候群とは
ウエスト症候群(West症候群)は、主に生後3か月から1歳未満の赤ちゃんに起こる、特殊な「てんかん」です。点頭てんかんとも呼ばれ、次の3つが特徴です。
- 点頭スパズム(特徴的なけいれん)
- 精神運動発達の停滞・退行
- 脳波での特徴的な異常(ヒプスアリスミア)
発症の時期
生後3〜12か月
ピークは4〜7か月
発症の頻度
出生1,000人に約0.3〜0.5人
男女比
やや男の子に多い傾向
国の制度
指定難病145/小児慢性特定疾病
医療費の助成があります
💡 なぜ「点頭てんかん」と呼ばれるのか
発作のときに頭を前に倒す「点頭(うなずき)」のような動きが特徴的なことから、この名前がつきました。
ただし、すべての赤ちゃんに頭を倒す動きが見られるわけではありません。
症状の見分け方

発作(スパズム)の動き
- 頭を前に倒す「コクン」という動き
- 両腕を上げる「バンザイ」のような動き
- 肩をすくめる動き
- 体全体を「ギュッ」と硬くする動き
発作のパターン
- 1回の発作は1〜2秒ほど
- 5〜30秒の間隔で繰り返す(群発)
- ひと続きの群発が5〜100回ほど続く
- 寝起きや眠る前に起こりやすい
発達の変化:初期
- 笑顔が少なくなる
- 視線が合いにくくなる
- 反応が鈍くなる
- ぐずりやすくなる
発達の変化:進んだとき
- 首のすわりが悪くなる
- 寝返りができなくなる
- お座りができなくなる
- 声を出さなくなる
⚠️ 見逃されやすい、はじめのころ
最初は1日に1〜2回しか起こらず、「しゃっくり」や「くせ」と間違われることがよくあります。
少しでも気になる動きがあれば、動画を撮って専門医にご相談ください。
動画で見る発作の様子
TSC Alliance(米国の患者団体)が公開している参考動画です。お子さんの症状と完全に一致しないこともあります。動画と同じでなくても、ウエスト症候群の可能性はあります。
動画を撮るときのコツ
タイミング
寝起きや眠る前が、発作の起こりやすい時間帯です
長さ
群発する様子がわかるように、2〜3分ほど撮ってください
角度
全身が写るような角度で撮ってください
メモ
日時、続いた時間、発作の前後の様子も記録しておいてください
正常な動きとの区別
モロー反射(正常)
- 音や振動などの刺激で起こる
- 両腕を広げて、抱きつくような動き
- 1回で終わり、繰り返さない
- 生後4〜5か月で自然になくなる
しゃっくり(正常)
- 横隔膜の規則的な収縮
- 「ヒック、ヒック」という音がする
- 体の動きは軽い
- 数分から数十分で自然に止まる
ウエスト症候群の発作
- 刺激がなくても起こる
- 「バンザイ」や、体を硬くする動き
- 規則的に何度も繰り返し、音はしない
- 時間とともに頻度が増える
判断に迷ったとき
ステップ1
01
動画を撮る
ステップ2
02
かかりつけの小児科に相談する
ステップ3
03
必要に応じて、小児神経専門医を受診する
「様子を見ましょう」と言われても心配なときは、ほかの医師の意見を聞くことも大切です。
診断について

脳波の特徴
- 高い振幅で不規則な波形(正常なリズムが失われている)
- 脳全体にわたる異常
- 起きているときにも、常に見られる
- この脳波が、診断の重要な決め手になります
診断の3つの柱
- 特徴的な発作(スパズム)が群発する
- 脳波でヒプスアリスミアが見られる
- 発達の停滞・退行がある
このうち2つ以上が認められる場合に、ウエスト症候群と診断します。
⏰ 迷ったら、まず脳波検査を
ウエスト症候群は、ほかの多くのてんかんと違って、必ず脳波の異常が見られます。
そのため、脳波検査で診断も、否定もできます。
治療の開始を遅らせないために、疑う症状があるときは、できるだけ早く脳波検査を行うことが大切です。
当院では、2023年4月の開業から現在までに、3名の新規発症のウエスト症候群を診断しています。
診断に必要な検査
脳波検査(最重要)
「ヒプスアリスミア」という特徴的な脳波を確認します。
- 検査時間:30〜60分ほど
- 痛みはありません(電極を頭に貼るだけ)
- 必要に応じて眠るお薬を使います
MRI検査
脳の形の異常がないかを調べます。原因を探り、治療方針を決めるために大切です。
- 検査時間:30〜45分ほど
- 通常、眠らせて行います
血液検査・尿検査
代謝の病気など、原因となる病気がないかを調べます。
- アミノ酸、有機酸、乳酸など
- 治療できる原因を見つけるために行います
治療について
⏰ 治療は急ぎます
発症から治療開始までが短いほど、見通しが良くなります。
できれば発症から1か月以内の治療開始が望まれます。
ACTH療法(第一選択)
- 筋肉注射(2週間毎日 → 2週間かけて減量)
- 入院期間は約1か月
- 有効率は約70〜80%
- 多くの病院で実施でき、実績も豊富です
- 入院が必要で、副作用の管理と定期的な検査が要ります
ビガバトリン
- 飲み薬で、外来でも治療できます
- 結節性硬化症がある場合は第一選択です
- 視野が狭くなる副作用があり、定期的な眼科検査が必要です
- 処方できる施設が限られます
治療の流れ
ステップ1
01
症状に気づいたら、すぐ小児科を受診
ステップ2
02
脳波検査などで診断
ステップ3
03
専門の施設で、ACTH療法またはビガバトリンによる治療
ステップ4
04
定期的な脳波検査と発達の評価で経過を見ます
🏥 ご紹介先について
脳波検査でウエスト症候群が疑われた場合は、専門的な治療ができる施設へ速やかにご紹介します。
- 国立精神・神経医療研究センター
- 聖マリアンナ医科大学病院
- 神奈川県立こども医療センター など
治療のあとは、当院でもフォローアップ可能です。
短期の目標
- 発作を完全に止める
- 脳波を正常化する
- 副作用を最小限にする
長期の目標
- 発達の回復
- ほかのてんかんへの移行を防ぐ
- 生活の質を保つ
予後について
治療により発作が改善
70〜80%
正常な発達を達成
20〜25%
基礎疾患がない場合
50%超
良好な予後が期待できます
見通しが良いときの特徴
- 発症前の発達が正常だった
- 原因がはっきりしない(潜因性)
- 早くに治療を始められた
- 治療によく反応した
- 脳波が早く正常化した
注意が必要なとき
- はっきりした基礎疾患がある
- 発症前から発達の遅れがあった
- 治療の開始が遅れた
- 治療への反応が乏しい
- 脳波の異常が続いている
長期的な見通し
治療後6か月〜1年
発作が抑えられているか、発達が戻ってきているかを評価します。多くは、この時期に治療の効果がはっきりします。
幼児期(2〜5歳)
ことばや社会性の発達を重点的に支えます。療育サービスの活用が大切です。
学童期以降
学習面の支援や、将来の自立に向けた支援を続けます。お子さんの特性に合う環境を整えます。
ご家族へのサポート

ウエスト症候群と診断されることは、ご家族にとって大きな衝撃です。けれども、支えを受けながら、お子さんの成長を支えていくことができます。
医療のサポート
- 小児神経専門医による定期的なフォロー
- 医師・看護師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の連携
- 緊急時の対応方法のご説明
- 抗てんかん薬の管理と、副作用の確認
療育・教育のサポート
- 療育サービス(0〜3歳の発達支援)
- 児童発達支援(未就学児の個別・集団療育)
- 特別支援教育
- 放課後等デイサービス
ご家族・仲間のサポート
- 患者家族会での情報交換
- きょうだいへの心理的な支援
- 家族カウンセリング
- レスパイトケア(一時的に介護を代わる仕組み)
ご家族ができること
- 規則正しい生活リズムと、十分な睡眠
- 発作の記録を続ける/お薬の管理
- お子さんのペースに合わせ、小さな成長を見つけてほめる
- 専門家との連携を密にする
経済的なサポート(2026年度)
| 制度 | 内容 |
|---|---|
| 小児慢性特定疾病 医療費助成 | 点頭てんかん(ウエスト症候群)は対象です(告示番号73)。医療費の自己負担が軽くなります |
| 指定難病の 医療費助成 | ウエスト症候群は指定難病145です。重症度などの条件があります |
| 障害児福祉手当 | 月額 16,560円(令和8年度) |
| 特別児童扶養手当 | 1級 月額 58,450円/2級 月額 38,930円(令和8年度) |
| 各種福祉サービス | 居宅介護、短期入所、日中一時支援など |
手当には所得による制限があります。申請先や条件は、お住まいの区の窓口でご確認ください。当院でも、制度や療育サービスについてご説明します。
役立つ情報源
受診のタイミング
🚨 すぐに受診してください
- 群発する発作が初めて出た
- 発作の回数や頻度が急に増えた
- 発作が5分以上続く
- 呼吸が苦しそうな発作
- 発熱と発作が同時にある
- 意識がはっきりしない
⏰ できるだけ早めの受診を
- 気になる動きを繰り返している
- 発達の停滞や退行を感じる
- 以前より反応が鈍くなった、笑顔が少なくなった、視線が合いにくくなった
受診の前に
ご用意いただきたいもの
- 症状の動画(2〜3分ほど)
- 母子健康手帳
- 発作の記録(日時・頻度・続いた時間)
- お薬手帳(飲んでいるお薬がある場合)
あると参考になること
- 妊娠・出産のときの様子
- これまでの発達の様子
- ご家族のてんかんの既往
- これまでの検査結果
当院での診療について
小児神経専門医による診療
日本小児神経学会の専門医が、経験をもとに診断と治療方針を決めます。
早い検査
緊急性が高いと判断した場合は、できるだけ早く脳波検査を行います。
連携の体制
診断がついたら速やかに専門施設へご紹介します。治療のあとは、当院でもフォローアップ可能です。
ご家族の支援
医療制度や療育サービスについてもご説明し、必要な支援につなぎます。
てんかん全般の診療については、てんかん診療のページもご覧ください。
よくあるご質問
Q. しゃっくりやモロー反射と、どう違いますか?
Q. 「様子を見ましょう」と言われましたが、心配です
Q. 脳波検査は痛いですか? 眠らせるのですか?
Q. West症候群は治りますか?
Q. 治療にはどのくらいの時間がかかりますか?
Q. 他の子と同じように成長できますか?
Q. 兄弟姉妹にも遺伝しますか?
Q. 予防接種は受けられますか?
Q. 保育園や幼稚園に通えますか?
Q. 家族はどのようなサポートを受けられますか?
Q. セカンドオピニオンは受けられますか?
質問を押すと、答えが開きます。
保護者の皆さまへ
ウエスト症候群と診断されることは、ご家族にとって大きな不安と戸惑いをもたらすことと思います。けれども今は、早い診断と早い治療によって、多くのお子さんで良い経過が期待できるようになりました。
大切なのは「一人で悩まない」ことです。私たち医療チーム、療育のスタッフ、そして同じ立場のご家族と一緒に、お子さんの成長を支えていきましょう。
どんな小さな変化や心配事でも、遠慮なくご相談ください。お子さんとご家族の、長いお付き合いのパートナーとして、できる限りの支援をいたします。
ご相談・ご予約
気になる動きがあるときは、お早めにご相談ください。小児神経学会専門医が丁寧に診察します。









