小児てんかん診療ガイド
専門医が解説する症状・診断・治療の全て
🧠 てんかんとは何か
てんかんは、何らかの原因で脳からの異常な電気信号が広がり、発作的な症状を繰り返す疾患です。多くの方が想像される全身のけいれん発作だけでなく、急にぼんやりする、体の一部がピクピクと動く、突然吐く、視界が暗くなるなど、実に多様な症状が現れます。
新生児から思春期までの間に発症するものを「小児てんかん」と呼び、1歳前後での発症が最も多いことが知られています。熱性けいれんと症状が似ている場合もありますが、てんかんの発作は高い熱がない時にも起こるのが大きな特徴です。
📋 てんかんの種類と分類
原因による分類
症候性てんかん
脳の器質的な異常が原因となるもの
特発性てんかん
明らかな脳の異常が見られないもの
発作部位による分類
部分発作(焦点発作)
脳の一部から始まる発作
全般発作
脳全体に広がる発作
小児てんかんの場合、発症する時期によってある程度種類を絞り込むことができるため、「いつ頃から、どの程度の頻度で発作が現れているか」という情報が診断の重要な手がかりとなります。
📸 MRI検査による診断例
皮質形成異常が疑われた症例
MRI FLAIR画像で、脳の皮質部分に形成異常(赤丸部分)が認められます。このような皮質形成異常は症候性てんかんの原因となることがあり、適切な診断と治療方針の決定のために重要な所見です。
MRI検査により脳の構造異常を詳細に評価し、てんかんの原因を特定することで、より適切な治療方針を立てることができます。
⚠️ 症状の見極めポイント
典型的な症状
- 全身のけいれん発作
- 意識を失う
- 体の一部がピクピクと動く
- 急にぼんやりして反応がなくなる
見落とされやすい症状
- 突然の嘔吐
- 視界が急に暗くなる
- 一時的に言葉が出なくなる
- 同じ動作を繰り返す
5分以上続く発作や繰り返す発作が見られた場合は、緊急性が高いため速やかに医療機関を受診してください。
🔍 診断のプロセス
詳細な問診
発症時期・頻度、発作の様子、持続時間、前後の状況、家族歴、発達の経過を詳しく聞き取ります
脳波検査
覚醒時だけでなく入眠時の脳波検査も実施し、異常脳波の有無を専門的に判読します
MRI検査
脳の構造異常の有無を確認し、原因となる病変を検索します
その他の検査
心電図(失神との鑑別)、血液検査、必要に応じて長時間脳波モニタリングを実施します
🏥 当院の検査設備
最新の脳波検査機器
当院では、日本光電:ニューロファックス1260を導入し、お子さんの脳の電気的活動を詳細に記録・解析しています。当日の検査および結果説明にも対応しますので、ご希望の方はお問い合わせ下さい。
• 即日結果説明が可能
• 入眠時脳波検査にも対応
• てんかん専門医による専門的な判読
• 子どもにやさしい検査環境
📊 脳波検査の実際
てんかん性異常波形の例
脳波検査では、このような特徴的な異常波形(赤枠内)を捉えることができます。専門医はこれらの波形パターンを詳細に解析し、てんかんの診断や種類の判定を行います。
脳波検査は痛みを伴わない安全な検査です。お子さんがリラックスした状態で検査を受けられるよう、当院では十分な配慮をしています。
💊 治療方針と予後
薬物療法
てんかんの治療は主に抗てんかん薬による発作のコントロールです。
- てんかんの種類に応じた適切な薬剤選択
- 段階的な用量調整
- 副作用のモニタリング
- 定期的な血液検査
生活指導
水泳やスポーツへの参加、通常の学校生活、規則正しい生活リズムの維持、十分な睡眠の確保など、普通の生活を送ることができます。
小児てんかんの多くは、成人までに自然に治る(自然寛解)ものが少なくありません。ただし、種類によって予後は大きく異なるため、専門医による正確な診断と適切な治療が重要です。
👨⚕️ 専門医受診のメリット
正確な診断
豊富な経験に基づく症状の評価と熱性けいれんとの正確な鑑別
適切な治療選択
個々の患者に最適な治療法の選択と副作用を最小限に抑えた薬物調整
迅速な対応
当日中の検査結果説明と緊急時の適切な対応
👨👩👧👦 家族へのメッセージ
お子さんに発作のような症状が現れると、ご家族は大変心配されることと思います。しかし、小児てんかんの多くは適切な治療により良好な経過をたどることができます。
• 早期の専門医受診
• 正確な診断に基づく適切な治療
• 規則正しい生活習慣の維持
• 過度な制限を避けた日常生活
発作時の観察ポイント
- 発作の時間
- 症状の詳細
- 発作前後の様子
- 可能であれば動画撮影
てんかんは決して珍しい病気ではありません。適切な理解と治療により、お子さんが健やかに成長していけるよう、専門医と一緒に取り組んでいきましょう。
まとめ
小児てんかんは多様な症状を示す疾患ですが、専門的な知識と経験を持つ医師による正確な診断と適切な治療により、多くの場合良好な予後が期待できます。気になる症状がある場合は、ご遠慮なく専門医にご相談ください。