シナジスとRSウイルス感染症について

・RSウイルス感染症はどういう病気?

RSウイルス(respiratory syncytial virus)とは、呼吸器感染症の原因となるウイルスのことです。2歳までのほぼすべての子どもが感染するもので、一般的な症状としては発熱・鼻水・咳など風邪のような症状を引き起こします。

大人がRSウイルス感染症に感染しても鼻風邪程度で済みますが、小さな子どもが感染すると重症化する恐れがあります。重症化するとRSウイルスの炎症が下気道(気管・気管支・細気管支)に入り、細気管支炎や肺炎となり、ひどい場合は入院に至ります。RS感染症が原因で入院する子どものうち、0~2歳の子どもの入院が86.4%と言われており、幼い子どもほど重症化しやすい病気です。実際、RSウイルスによる下気道感染症は、生後1年以内の子どもが入院する主な原因と報告されています。

・重症化するとどうなるの?

重症化すると、主に以下のような症状が見られます。
・呼吸が浅く、呼吸数が増える
・ゼイゼイ・ヒューヒューとした呼吸となる
・鼻で息をするようになる
・哺乳ができなくなる
気管に炎症が起きるため、呼吸のしづらさが感じられます。このような症状が起きたら、すぐに医師に相談しましょう。

・重症化しやすい子どもの特徴

RSウイルス感染症は、幼い子どもほど重症化しやすい病気です。加えて、以下の特徴がある子どもは重症化しやすくなります。
・予定日より早く生まれた子ども
・生まれつき呼吸器や心臓に病気を持っている子ども
・免疫不全を伴う子ども
・ダウン症候群の子ども
当てはまる項目がある場合は、特に注意して予防する必要があります。

・RSウイルスとシナジスの関係とは?

RSウイルスのワクチンは我が国ではまだ小児の適応がありません。(2023年10月現在)また、インフルエンザやCOVID-19のように、ウイルスに特異的な治療薬も現在はありません。RSウイルスに感染した場合は、症状を緩和させるための酸素投与や点滴などの対症療法を行います。

そのため、重症化しやすい赤ちゃんには予防が必要です。シナジスはRSウイルス感染症の重症化を予防するための注射薬です。
シナジスは遺伝子組み換え技術によって作られた、RSウイルスに対する「モノクローナル抗体」でワクチンではありません。

・シナジスを打つことができる方

シナジスを保険で打つことができる方が下記のように限られています
1) 早産児
在胎週数28週以下で、RSウイルス流行開始時に12ヶ月以下
在胎週数29〜35週で、RSウイルス流行開始時に6ヶ月以下
2) 慢性肺疾患を持つ児
過去6ヶ月以内に気管支肺異形成症などの呼吸器疾患の治療を受けたことがあり、RSウイルス流行開始時に24ヶ月以下の子ども
3) 先天性心疾患を持つ児
RSウイルス流行開始時に24ヶ月以下の先天性心疾患を持つ子供で、血行動態(心臓や血流)に異常がある子ども
4) 免疫不全を持つ子ども
RSウイルス流行開始時に24ヶ月以下の免疫不全を持つ子ども
5) 21-trisomy(ダウン症候群)の子ども
RSウイルス流行開始時に24ヶ月以下のダウン症候群の子ども

・シナジスの投与について

シナジスの投与は、シナジスの流行初期からスタートするのが最適です。また、効果を発揮するのに必要な体内のシナジス量を維持するためには、RSウイルス流行期間中は月1回の投与を繰り返す必要があります。
注射継続中にRSウイルス感染症にかかった場合も、再感染による重症化を防止するために注射は継続して行いましょう。
シナジス投与を辞めるタイミングは、子どもの身体の状態やRSウイルスの流行によって異なります。
自己判断で投与を辞めてしまうと、シナジスを打たない期間に感染し、重症化する危険性があります。医師の指示に従って投与を継続しましょう。
また、流行時期は、都道府県や年によって異なるため、近隣の流行状況に注意しておく必要があります。

・シナジスによる副作用

シナジスは筋肉内に注射するため、主な副作用として発熱、注射部位の腫れや痛みがあげられます。
また、重大な副作用としてアナフィラキシーショック、血小板減少(鼻血・歯茎の出血・あおあざができる)が出る場合があります。重大な副作用が見られた場合は、すぐに医師に申し出ましょう。
また、シナジスの注射を受けて、過敏症状(冷や汗、全身のじんましん、
吐き気や嘔吐、声が出にくくなる、息が苦しくなる、顔が青ざめるなど)がみられたことが場合は、注射を受けられません。
シナジス投与後の子どもの様子を気にかけてあげてください。

当院でもシナジスの投与が可能です。当院での接種をご希望の際は、出生された病院等に紹介状を書いてもらい、ご持参ください。また、在庫を確保する関係上、お電話で予約をお願い致します。